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外務省が2016年度から、入省する職員にTOEFL 100点以上の獲得を目標としたことについてTOEFLの専門家として考えてみました

2016.01.16

これまで私は、基本的にはTOEFL試験やTOEFLでのスコアアップ方法・学習法についてのみ、このブログに書いてきましたが、今回は趣向を変え、TOEFLに関する時事的なトピックについてTOEFLの専門家としての意見を書くことにします。

 

追記:1/20
以下のブログ記事では、外務省の「総合職」と「専門職」を混同、「内定時」の時期を間違って解釈して書いているところがあります。
それらを訂正した、次回のブログ記事も合わせてご一読下さい。

ブログ投稿「【訂正版】外務省が2016年度から、入省する職員にTOEFL 100点以上の獲得を目標としたことについてTOEFLの専門家として考えてみました」(2016年1月20日)


発端となったのは以下のニュース。

 

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外務省、英語力に目標…TOEFL100点以上(YOMIURI ONLINE、2016年1月4日)


外務省は2016年度から、入省する職員に国際的な英語力テストTOEFLで100点以上(またはIELTSで7・0以上)の獲得を目標に課すことを決めた。

入省時から即戦力として高い英語力を身に付け、外交現場での交渉に役立てるのが狙いだ。

16年4月以降に入省予定の内定者を対象とし、入省までにテスト結果の提出を求める。今春入省予定の総合職の新卒内定者約30人のうち、内定時の達成者は3割程度で、入省時までの達成を努力目標とする。

他省庁から大使館などへの出向者についても、推薦の目安として各省に示すほか、外部から起用する大使については、海外勤務や大学などの留学経験が2年以上ある場合、免除する。

外務省では入省後、英語やフランス語、中国語など専門語学ごとに語学研修を行うが、「英語以外が専門でも、欧米の外交官と対等に意見交換できる英語力が必要」(幹部)と全員に同じ目標を設けた。中国や韓国では、欧米の大学に進学した学生が外交官になる例が多く、英語による交渉力の差への危機感がある。

(青字は私がつけたもの)

 

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上の記事では、TOEFL 100以上だけでなく、IELTS 7.0以上の獲得でもよいとのことですが、IELTSの方は専門ではないのでここでは語りません。

 

私がブログ記事を書くことにしたのは、このニュースに対する意見として

TOEFL100点以上の基準を満たした外務省の内定者が3割程度「しかいないなんて」

と外務省職員の英語力を嘆く内容の記事を読んだから。
(特定の記事を批判したい訳ではないので記事のリンクはなしで。またこの赤字の1文は記事内の表現を言い換えたものになっています。また同様の意見をコメント欄等で多数見かけました。)

このような意見に対して違和感を覚えたので、少し調べてみることにしました。

(以下の青字も私がつけました)

 

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平成27年度 外務省専門職員採用試験案内


<第1次試験>

記述式の専門試験:憲法、国際法、経済学の3題から2題選択解答
多肢選択式の基礎能力試験:知能分野27題,知識分野13題,計40題出題
時事論文試験:1題
記述式外国語試験:外国語和訳2題と和文外国語訳2題

(注)
1.基礎能力試験において一定の基準点に達しない者は,他の科目の成績のいかんにかかわらず不合格となります。
2.外国語試験は,英語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語・イタリア語・アラビア語・ペルシャ語・ミャンマー語・タイ語・ベトナム語・インドネシア語・中国語・朝鮮語のうちから1ヵ国語を選択できます。


<第2次試験> 第1次試験合格者が受験

外国語試験(面接):外国語会話
人物試験:個別面接(2回)、グループ討議
身体検査

(注)

1.外国語会話は,第1次試験で受験した外国語で行います。
2.個別面接の参考とするため,性格検査を実施します。
3.人物試験において一定の基準点に達しない者は,他の科目の成績のいかんにかかわらず不合格となります。

 

最終合格者発表・・・平成27年8月28日(金曜日)10時


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上記の選考内容から外務省の合格者は、専門の外国語において会話も含め高い能力を有していると判断されます。
そして、英語以外の外国語を選択した受験者に対して、英語力が問われることはありません。

 

ということで、私が気になるのは「今春入省予定の総合職の新卒内定者約30人」のうち英語を外国語として選択したのは何割か。
恐らくはではありますが、外務省の試験を英語でパスするような人は、TOEFL100点以上のスコアを獲得されているはず。
未達成の残りの7割ほどの方々は、英語以外の外国語を選択されたのでしょう。

 

合格発表は8月末。
英語以外の外国語で合格した人は、その後、TOEFLで100以上(またはIELTSで7.0以上)獲得のために頑張り始めることになります。
ニュースは1月4日ですから、外務省への内定獲得後、4ヶ月で100以上獲得を目指した結果になります。どのくらいのスコアからTOEFL対策をスタートしたのかは人によって異なりますが、TOEFLは短期間で詰め込めばスコアがどんどん上がるような試験ではないため、多くの内定者にとっては厳しい目標設定であり、その結果が「内定時の達成者は3割程度」ということなのでしょう。

この残りの7割程度の方々は「入省時までの達成を努力目標」と決められていますが、「入省時」が4月初とすると、3/19か3/26の受験日まででの目標スコア獲得が求められます。
(通常、10日ほど、早いときは1週間くらいでスコアが出ます)

 

3月末まで残すところあと2ヶ月ほどとなり、「努力目標」とは言え明確な数値が定められているので、精神的にかなり厳しい毎日を送られている内定者の方も多いのではと推測します。
ただ入省を控えた方は、大学生・大学院生がほとんどでしょうから、必要なスコアアップの幅が大きくないのであれば、期末の試験が終わった今ごろから毎日TOEFL対策に集中すればなんとかなるかもしれません。
その場合、残念ながら、卒業旅行等で学生最後の自由時間を楽しむことはできなくなってしまうかもしれませんが。

 

以上、考えたことをつれづれなるままに書いてみましたが、英語以外の言語のスペシャリストの方が、TOEFLで100以上獲得を求められるというのはかなり厳しい要求だと言えます。

 

ちなみにTOEFLで100点を獲得するような人は、TOEICなら何点くらいのレベルかが分かるのが以下の記事。


TOEIC何点だとTOEFLで何点取れる?(続き)(2015年11月25日)


TOEICで900点台後半が取れる人でも、TOEFLを受けるとスコア平均は90点未満という統計結果となっています。

 

それだけ高い英語力を身につけることを、他の言語を専門とする人たちが求められているのです。
数ヶ月というような短期間の準備で100以上が取れなくて当然であり、「英語が話せない」「英語ができない」などと非難されるべきではありません。

 

ただ、外務省が職員全員に対して高度な英語力を求める背景も理解できます。
それぞれの言語の専門家の方でも、国際会議などでは英語を使ってのコミュニケーションが求められることが多いであろうと容易に想像できますので。

TOEFLスコアは2年間有効なので、外務省専門職員を目指す学生の方々は採用試験のずっと前に100以上のスコアを獲得しておくと、合格後焦って取り組まなくても済みます。
早めにTOEFL対策を開始して、100以上を獲得し、採用試験課目の勉強に集中できるようにしましょう。

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